Introduction
12歳の頃に僕は何を置いてきたのだろうか。
実家に帰っても暇なので子どもを連れて少し離れた公園へ行く。裏道を通れば途中でカタフチ君の家を見る。小さな川の向こう側。かつて周りにあった田畑や裏の山にもピカピカの家が建ち並んでいる。近所の家もみなリフォームされたり建て替えられたり。まったく変わった風景のなかでカタフチ君の家はけれども、昔とまったく同じままだ。屋根の形、壁の色、(僕が見る限り)閉めっぱなしのカーテンの柄。最後にそこを訪れたのは三十年以上前のこと。彼とは幼い頃から大の仲良しだったけど中学生になると自然に会わなくなって、噂では不登校になったという、学校でも見なくなった。僕は彼のことを気にしながら何もしなかった。ずっと気にしていたけれども。あの玄関にいま彼の姿が現れたらどうだろう。目を凝らしてみるけれど何か起こる前にわたしは子どもたちに引っ張られていく。
12歳の頃に僕は何を置いてきたのだろうか。
京都を拠点に創作する劇作家・演出家の田辺剛が、同じく京都の実力派俳優らと取り組む新作の短編作品。中年になった「僕」が故郷の町を歩いて蘇る少年の頃の記憶とそれにつられて次々に湧いてくる妄想のパレス(邸宅や家の意)に迷い込む不思議な時間を描きます。(上演時間40分)
Date,Place,Reservation
[料金]一般:前売1,000円/当日1,200円
高校生以下:前売500円/当日700円
[チケット予約]こちらからご予約ください
[お問い合わせ]メールはこちら/電話=050-3709-9538
※この作品は第39回Kyoto演劇フェスティバルにて上演される作品です(実行委員会プロデュース企画作品)。
[主催]京都府・指定管理者 創・Kyoto演劇フェスティバル実行委員会[企画制作]下鴨車窓
※同日にホール上演される他団体の作品も追加料金不要でご覧いただけます。ただし和室にて上演される作品をご覧いただく場合には300円の追加料金が必要です。各会場の受付で当公演のチケットをご提示のうえお支払いください。
《2月17日(土)に上演される他団体の作品》
[ホール公演]
14:00 山科醍醐こどものひろば演劇部 ぽっぷ・こーん『きつねの森の演芸会』
16:30 ミュージカル劇団 ケセラ・セラ『綾小路家の人々』
17:50 京都放送劇団『辰巳ヶ淵』
[和室公演]
19:30 菱安かなり 怪談『安達ヶ原』一人芝居狂言風味
[ホール公演]
14:00 山科醍醐こどものひろば演劇部 ぽっぷ・こーん『きつねの森の演芸会』
16:30 ミュージカル劇団 ケセラ・セラ『綾小路家の人々』
17:50 京都放送劇団『辰巳ヶ淵』
[和室公演]
19:30 菱安かなり 怪談『安達ヶ原』一人芝居狂言風味
Actors,Staff
[出演]
西村貴治
京都府出身。1997年演劇企画集団「THE ガジラ」鐘下辰男主宰塵の徒党に参加。以降舞台を中心に活動。2016年頃より京都でニットキャップシアター、烏丸ストロークロック、あごうさとし作品を中心に芝居をはじめる。
大熊ねこ
兵庫県出身。俳優。京都・大阪を拠点に活動する劇団「
遊劇体」所属。
1998年の入団より現在に至るまで全ての本公演に出演。また桃園会や兵庫県立ピッコロ劇団などの劇団公演、朗読や即興演劇のライブ出演などにも活動を広げる。2007年、第9回関西現代演劇俳優賞 女優賞受賞。
[脚本・演出]
田辺剛
福岡県出身。劇作家、演出家。現在は京都市に在住し、創作活動を続けている。
京都大学在学中に演劇を始める。学生時代の活動は1995年に旗揚げから参加した劇団「京都・古典・劇場」で主に演出を担当した。ギリシャ悲劇から三島由紀夫まで東西の古典戯曲を手がける。大学卒業後は、劇団「t3heater」(1999年結成)を経て2004年からは作品ごとにメンバーを募る創作ユニット「下鴨車窓」を中心に活動を行う。九州から北海道まで地域を横断しての創作と公演を続け、2015年には初めて香港とマカオの海外公演も果たした。
2005年に『その赤い点は血だ』で第11回劇作家協会新人戯曲賞を受賞。2006年秋より文化庁新進芸術家海外留学制度で韓国・ソウル市に一年間滞在し、劇作家として研修する。2007年に『旅行者』で第14回OMS戯曲賞佳作を受賞。
2000年から2014年まで京都の小劇場「アトリエ劇研」(京都市左京区)の劇場スタッフを務め、特に2008年には同劇場のディレクターに就任して劇場の運営責任者となった。2014年8月末に任期満了にて同ディレクターを退任するとともに同劇場も退職。そして2014年10月からは「スペース・イサン」(京都市東山区)のプロデューサーに就任、2016年12月まで劇場運営に携わる。
[音響プラン]森永キョロ[舞台補佐]川上明子/酒井信古
[主催]京都府・指定管理者 創・Kyoto演劇フェスティバル実行委員会
[企画制作]下鴨車窓