下鴨車窓の代表作
『旅行者』は2006年に初演され、2008年と2016年にも再演された下鴨車窓の代表作です。2010年には韓国の演出家ウォン・ヨンオによっても上演され日韓両国でも上演されました。
住んでいた街を追われ海の向こうの故郷を目指して旅をする姉妹の物語です。その題材は今も昔もその普遍性を失うことなく上演のたびにさまざまな評価がされてきました。
抽象的でありながら、強烈に現実的。どこでもないようで、確実にどこかであると思わせる現実性。中国・朝鮮の残留孤児、パレスチナ難民、そして多くの亡命者たち。観客は何もないだだっ広い舞台の上に彼らを見出すだろう。国家や社会に追われ、家族は離散する。人類が経験し続ける大きな過ちに、われわれはあらためて正面から向き合わされるのである。
また、戯曲としては2007年に第14回OMS戯曲賞佳作を受賞しました。
人の存在は、実は曖昧なものでしかないことが、きちんと生存の危機に近い環境で問われている。<中略> 見捨てられた者同士が寄り添う、という優しい結末を強く逞しいと感じた。戦乱で引き裂かれる家族。その中でささやかに幸せを作りたいという気持ち。そこには、偽悪を必要としない誠実さや、何かを構築したいと願う気持ち、建設への意志を感じる。
最後の上演から7年後となる2023年、新しい『旅行者』の創作に挑みます。
戯曲『旅行者』
上演記録
2006年3月[京都]京都芸術センター
※写真撮影=平野愛
2008年3月[大阪]精華小劇場
2016年8月
[伊丹]AI・HALL
[東京]座・高円寺
※写真撮影=松本成弘
劇団ノットル×NPO劇研
日韓合同プロジェクト(演出=ウォン・ヨンオ)
2010年6月-7月
[京都]アトリエ劇研
[韓国・ウォンジュ]フヨン公演芸術センター
[韓国・ソウル]大学路ヨンウ小劇場
※タイトルを『Someone on a journey』として上演